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”2020年以降のスポーツ界のために” SBAが目指すもの。vol.4

文:岡田 真理 構成:SPOZIUM編集部

今年10月に開校した、大学生・社会人のための超実践派スポーツビジネス講座「Sports Business Academy(SBA)」。荒木重雄氏と共に、SBAの共同創設者である鈴木友也氏にもお話を伺った。後編では、日本のスポーツ界が抱える課題と解決策、SBAを通して目指すことについて語っていただく。

Q5.鈴木さんから見て、日本のスポーツ業界が抱える課題とは何でしょうか。

日本のスポーツ業界は今、ビジネスモデルを変えなくてはいけない過渡期に来ていると思います。今までは、例えばスポンサーシップでは、協賛企業がスポーツに支払ったお金に対してリターンを求めることをほとんどしてきませんでした。日本ではもともとタニマチ主義が強いため、リターンは期待せずにホストとして支えるモデルが主流だったのです。しかし、最近ではそのモデルが通用しない局面も出てきています。

実際に、スポーツに協賛しようとする企業から、僕のところにこんな相談が来ることがあります。「大きなスポーツイベントがあり、そこにコミットすることを決めました。年間数十億円出しますが、このお金を払うことによって自分たちは何ができるんでしょうか」と。企業も代理店も、そのノウハウを持っていないんですね。

今まで企業(広告主)と代理店は露出することに重きを置いてきましたが、今は露出だけで人がモノを買う時代ではありません。マーケティングのAIDMAモデルでいうならば、露出というのは最初のAttentionとInterestくらいまでしか効果がない。新サービスや新事業を紹介するのが目的ならそれでいいのですが、課題によってはその先のDesire、Memory、Actionまでリーチさせなくてはならない。スポンサーシップで言えば、それぞれの課題に合った解決の仕組みを作るビジネスモデルが、今の時代は必要なのです。(編集部注:今求められるスポンサーシップの考え方については、鈴木氏のこちらのコラム参照)

Q6.その新しいビジネスモデルを浸透させるために、必要なことはなんでしょうか。

問題なのは、従来のビジネスモデルがこれまで上手く機能していたために、スポーツのインサイダーに新しいモデルを作るノウハウが不足していることです。米国に比べると、協賛企業にも、協賛されるスポーツ組織側にも、協賛を仕切っている代理店にもまだまだそうしたインサイトが十分蓄積されていません。そのため、「アメリカのスポーツビジネスはどうなっているのか?」という相談が僕のところにも舞い込むようになりました。

2020年には東京オリンピックがありますが、これを機にスポーツ業界には大きなお金が入ってきます。オリンピックが終わったときに、スポーツが投資対効果の高いビジネスツールとしてしっかり使われていたという成果が出なくてはならない。このチャンスにきちんとビジネスモデルを変えていかないと、「お祭りがあって楽しかったけど、結局うちが出したお金は何にどう使われたんだろう?楽しさや国民的一体感の醸成以外の効果はあったのだろうか?」となってしまう。そうなると、「お祭りがなければお金は使いませんよ」となり、結局昔からのタニマチ主義から脱却できません。

東京オリンピックが終われば、バブルで拡大していたスポーツビジネス市場は間違いなく縮小していきます。その際、「オリンピックにお金を使ってみたら、意外と効果があったね。じゃあ、プロ野球やJリーグ、もしくは新しくできたバスケットボールのBリーグにも使ってみようか」といった動きが出てこないといけない。そうなるためには、新しいビジネスモデルのノウハウを持つ人材を今のうちから作ることが必要なのです。

Q7.SBAを通して鈴木さんが目指していることを教えてください。

今年の初めに荒木さんとお話していて、荒木さんのところにも同様に企業からの相談が来ていることを知りました。こうした相談に真っ先に応じるべきスポーツのインサイダーを経由して、あるいはスルーして、荒木さんや僕のところに相談が来ているわけです。まあ、お仕事を頂けるのは個人的には嬉しいのですが(笑)、東京オリンピック開催を視野に入れて日本のスポーツ界の将来を考えると、これは由々しき事態だなと。二人で、これは何かアクションを起こさないといけないね、という話になりました。

以前、広瀬一郎さんが主宰していたスポーツマネジメントスクール(SMS)は、優秀な人材をたくさん輩出したトップレベルのスクールです。そのSMSを荒木さんの会社が引き継ぐと聞いて、ぜひ協力したいと思いました。今では日本にも多くの大学がスポーツビジネスコースを持ち、またスポーツビジネススクールも存在しますが、大学生や若手ビジネスパーソンを対象にしたエントリーレベルのものがほとんど。椅子取りゲームの参加者を増やすスクールはたくさんありますが、現在の日本のスポーツ業界の課題は椅子の数を増やすことですから、まずは椅子を増やすことのできる人材を作らなくてはなりません。SBAはそこに寄与していくことを目的としています。

将来的にはアジア最高峰のスポーツビジネス教育機関になることを目指していて、日本のスポーツビジネスの知見をアジア各国に発信していくことを目標にしています。すでに日本だけでなく、ヨーロッパやアジアの第一線で活躍している人がアドバイザーや講師としてSBAに来てくれているので、そういう方々の知見を、日本だけでなくアジアのスポーツリーグや協会のマネジメントをよりよくするために活用していけたらいいですね。

Q8.日本のスポーツ業界に対して、ほかに働きかけをしたいことはありますか。

個人的には、日本のスポーツ界が競技の縦割りになっていることに、なんらかのテコ入れをしたいなという思いがあります。野球をやっていた人は野球、サッカーをやっていた人はサッカーと、その競技で成績が優秀だった人が協会のスタッフになることが多々ありますよね。

でも、競技軸が強すぎることの弊害もあるんです。マネジメント的に考えると、発想が凝り固まる。“あるべき姿”に固執しすぎて、柔軟な考え方が入れづらくなる。「強いチームさえ作れば、お客さんが来るだろう」という考え方では、スポーツビジネスはなかなか発展しません。

スポーツファンもそうです。例えば、ニューヨークならヤンキースのキャップをかぶってニックス(バスケ)とかジャイアンツ(アメフト)の応援に行くファンは大勢います。ファンが競技軸を超えるので、その分市場も大きくなります。日本では、タイガースの帽子をかぶってガンバ大阪の試合を応援するサポーターはあまりいませんよね。ファンも競技を軸に蛸壺のようになっているのです。

他競技や競技経験のない人が外から入ってきて、固定観念を壊していく。競技至上主義をいい意味で乗り越えていく。僕個人としては、そんなところにも尽力していきたいなと考えています。

文:岡田 真理 構成:SPOZIUM編集部