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”スポーツ×データ”が新たな市場を切り開く。日本スポーツアナリスト協会の挑戦(後編)

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部

JSAA(日本スポーツアナリスト協会)が設立されてから約1年半。 発展し続けるスポーツ界を取り巻く環境にこれまで馴染みのなかった情報、データ、テクノロジーの高度化により「スポーツアナリティクス」という新たなマーケットが創出され、「分析」をすることで勝敗を分ける新たな「スポーツアナリスト」と呼ばれる人たちが現れました。前編に続き、日本スポーツアナリスト協会の役員であるお二人、渡辺啓太さん、小倉大地雄さんにお話を伺いました。

Q5. ”スポーツ×IT”ということで、企業側からの注目度も高まっているのではないでしょうか?

(渡辺)センサーなどの製品開発やアプリ開発の相談を受けることは増えてきました。まだ商品化されたものはありませんが、数年後にはいくつか出来てくるんじゃないでしょうか。

トップレベルだけではなく、草の根レベルでも一般のスポーツをやっている人たちが使用出来るツールを開発する手助けも出来るかもしれません。トップだけにしか仕事がないと、席はすぐ埋まってしまい、その限られた席の奪い合いになってしまいますが、企業との関わりの中から新たな切り口を作っていくことでアナリストの職域を増やしていくことにつながります。

(小倉)ITとスポーツはとても相性が良いですし、今後間違いなくチャンスのある領域だと思います。JSAAはITとスポーツに関わる企業の窓口になれるのではないかと考えています。従来のようにスポーツの媒体としての価値だけを捉えるのではなく、JSAAとしては特にIT関連のスタートアップ企業などがスポーツを活用してマーケティングしていくことでお互いが成長していけるような関係を築いていきたいと思っています。そこに介在するのがスポーツアナリストです。各競技の最前線で活動するアナリストが揃っているJSAAの強みを生かせば、企業にとっては横展開が可能なプラットフォームになれると思います。とにかく、今までとは違った血をどんどんスポーツ界に取り入れていきたいですね。

小倉@14年カンファレンス

Q6. アナリストは今後どういう価値を築いていくべきでしょうか?

(渡辺)JSAAには各競技で活躍するアナリストが集まっていますが、アナリストとしてまずすべきことは現場でパフォーマンス向上に務めること、具体的に言えばリオデジャネイロ五輪でのメダル獲得など競技成績に貢献することです。でも、勝利だけを追求すれば社会的価値を見出すことは難しくなります。今後は例えばアナリストの強みである数字を使って、数学嫌いな子供たちに教育面で価値を見出したり、メディアに対してデータが持つ本当の意味を解説できる立場として関わったり、新しい切り口での価値創造の必要性を感じています。

また、アナリストにも様々な業務があり、それぞれが持っているスキルセットが違うので人が行き来出来る環境作りは課題です。「バレーボール」など競技に特化するのではなく、それぞれが持つスキルセットが活かされる土壌を作ることによって、競技横断型のスポーツアナリストという存在が繁栄していくと思います。

自分の価値を高めるために個人で色んなことをやっても、次につながるアナリストや仲間がいなくては市場は出来ません。子供たちが目指すスポーツ界におけるひとつの職業として、スポーツアナリストを確立していくためには、1人でアナリストの価値を高めるのではなく、仲間、そして続く後輩たちと社会的価値を見出さなくてはいけないと感じています。何事も1人でやるのは限界があるので多くの方々のご支援をいただきながら長期的に取り組むことが大事だと思います。

渡辺@14年カンファレンス

Q7. JSAA立ち上げから1年半で得た手応えと、今後に向けての課題を教えてください。

(渡辺)個人で活動するよりも外部との接点が増え、勉強の機会も増えました。そして多くの仲間と作り上げていくことで様々な気づきがあります。課題としては、本業とのバランスですね。JSAAの活動によって得られることも大きいのですが、本業を疎かにすることは出来ないので、まずは本業を第一に考える必要があります。JSAAの活動だけに労力を費やすことができないという現状なので、まだまだ発展途上と言えるでしょう。

(小倉)ゼロベースから始め、ダイナミックなことが出来るのはとてもやっていて楽しいのですが、理事も全員が本業の傍ら活動しています。組織に腰を据える人間がいないので、今後組織として基盤を固め、その状況を変えていければと思います。これは各競技団体も課題とするところですが、JSAAとしても強化と普及のバランスを考えていくことが今後の課題になってくるかと思います。

Q8. 12月19日にJSAA主催カンファレンス『SAJ2015-スポーツアナリティクスジャパン2015-』が開催されますね。

(渡辺)はい。昨年、初めてこのカンファレンスを開催したのですが、スポーツアナリストのみならず、競技団体やクラブチーム関係者、一般企業のビジネスパーソン、また大学関係者に学生など様々なバックグラウンドの方々にお集りいただきました。

14年カンファレンス

2年目を迎える今年は「スポーツアナリティクスが育む“知性<インテリジェンス>”」というテーマを設定しました。普段データ分析を行うアナリストだけでなく、広くスポーツに関わる方々にも一定のインテリジェンスを持っていただくことで、データへの理解も深くなり、パフォーマンス向上にも繋がると考えています。是非多くの方々にご参加いただき、豪華講演者陣によるレクチャーから多くのことを得ていただきたいと思っています。

(小倉)実は昨年第1回を開催するに当たって参考にしたカンファレンスがあるんです。2007年からMITのSloanビジネススクールがSports Analytics Conferenceを開催していて、今や参加者が5,000名にも上る一大イベントです。そもそも「スポーツアナリティクス」というワードにも馴染みがなかったのですが、このカンファレンスの存在を知ったとき「これだ!」と思いました。

スポーツアナリストの価値を高めるためには、マーケットを創造する必要がある。そのマーケットとなるのがスポーツアナリティクスなのではないかと。アナリストの活動に限定するのではなく、SAJではスポーツアナリティクスというもう少し広い範囲をカバーすることで市場形成に関わるより多くの方々の興味関心を引くことが出来るのではないかと考えました。

(渡辺)強化の側面に関して言えば、スポーツ界の方々に興味を持っていただけるんですけど、外部からの評価を高くしないことには、スポーツアナリストを取り巻く環境はなかなか変わらないですよね。その働きかけの一環としてSAJを開催し、より多くの方々に強化だけでなく教育やエンターテイメントなど幅広くスポーツにおけるデータ分析やテクノロジーについて知っていただき、可能性を広げていきたいですね。

詳細はこちら。
『SAJ2015-スポーツアナリティクスジャパン2015-』

 

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部