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“マネージャー”ではなく“パートナー”に。 アスリートと一緒に新たな価値を生み出す方法。(前編)

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部

三人の日本を代表するアスリートをマネジメントする株式会社スポーツバックス代表取締役澤井芳信氏。紆余曲折を経て、マネジメント会社を経営する立場となった彼のアスリートとの向き合い方、マネジメントに対する考え方などを伺った。

最初に入られた企業ではどのような社会人生活を送られていたのでしょうか?

大学卒業後、株式会社新昭和に入社し、広域複合企業チームである新日鐵住金かずさマジックでプロを目指して、午前中は会社に出社したのちに昼からは練習する日々を送っていました。プロを目指すには1年目からスタメンを張れる選手でないといけない。しかしそれは実現せず、高くなっていく壁を前にして悩みもどんどん深くなり、イップスになってしまいます。企業スポーツのプレッシャーを肌で感じ、2年目を終えた時に引退を考えていることを監督に伝えました。

すると、監督から言われたのは「お前が入ることによって、辞めたやつがいる」。企業チームには限られたイスしかなく、自分がチームに入りたいと希望したがために辞めさせられた選手がいたという事実。入団したからには責任がある──自分勝手に辞めるというのは無責任ということを再認識しました。もう一度自分と向き合い、 野球とはこれまで以上に真剣に向き合いました。まずはイップスを克服することから始め、次第に試合にも出ることができるようになりました。

アスリートマネジメントの道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか?

1年目以降、プロへの道が遠ざかるに連れて“違う道”というのも考え出しました。元々、映画「ザ・エージェント」や書籍「マネーボール」をきっかけにエージェント、マネジメントの世界にも興味を持っていたんです。人と接すること、そしてスポーツが好きで、ビジネスマンになりたかった。スポーツの現場でスーツを来て、仕事が出来るというのを理想と考えるようになりました。

選手として引退すると決めたとき、会社に社員として残るという選択肢は考えていませんでした。退職してからより一層、自分が所属していた新昭和という会社の素晴らしさを感じるようになりましたが、自分の想い描いた絵を達成するために、次の道をスポーツビズパートナーズ(現スポーツパートナーズ)という会社で歩むことを決めました。

晴れてアスリートマネジメント会社で社会人人生をリスタートされましたが、初めはどのようなお仕事をされていたのですか?

初仕事の舞台は宮崎。1ヶ月半、プロ野球のキャンプ地である宮崎を食・観光・スポーツと結びつけるというのが私に課された初めての仕事でした。シーズンが始まると、人脈が少ない中テレビ局などに足を運んで会社に所属している選手を売り込む営業から始めました。どれだけ長く困難な営業プロセスを経て広告の話を一つ決めても全ては最後の“数字”で評価される現実を痛感することとなりました。

そんな澤井さんに訪れた大きな転機とは何だったのですか?

現在もお仕事をさせてもらっている上原さんのメジャー挑戦に伴い、2009年に初めて海外に飛び出したことです。上原さんと共に国を超えて仕事をするようになり、改めて海外では人脈や人に必要とされる人材であることの重要性を改めて理解しました。

スポーツ界の中で、自ら地位を築き上げた選手が私を信頼してその築き上げたものを預けてくれていることで、責任感やプレッシャーもありますが、ビジネスマンとして少しずつ自信を得ることができるようになりました。

澤井さん@フェンウェイ3

上原さんとお仕事されたことで、マネジメントに対する考え方は変わりましたか?

そうですね。最初のうちは、選手をメディアに売り込む“セールス”の仕事が多かったのですが、上原さんを担当することで逆に様々なステークホルダーの方々から問い合わせを受け、共に新しい価値を生み出していくという、ある種“クライアント”の立場で仕事をする経験を得ます。

アスリートたちがメディアに出演したり、講演をしたりして色んな人に自分のストーリーを伝えることも大切ですが、それ以外にアスリートたち自身を活かせるところがあるのではないかと思うようになったのです。つまり、売り手・買い手両方の経験を得られたことで、選手に付加価値をつけるということを意識するようになりました。メディアに露出することだけが、アスリートの価値ではないということに気付き出したのです。

その一つのきっかけが、MLBが制作したこちらの映像です。

上原さんのファンとの交流を楽しむ姿がメディアに取り上げられ、大きな話題となりました。自らコミュニケーションを取って、ボストン市民の輪の中に入っていくことで生まれる上原さんの価値をこの時改めて実感したのです。

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部