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“マネージャー”ではなく“パートナー”に。 アスリートと一緒に新たな価値を生み出す方法。(後編)

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部

三人の日本を代表するアスリートをマネジメントする株式会社スポーツバックス代表取締役澤井芳信氏。前編では、アスリートマネジメントという職業に対する考え方の変化を伺った。後編では、その具体的な取組みを紹介する。

その後、オリンピック女子競泳元日本代表の萩原智子さんと契約されましたが、なぜ現役生活も終わりに近かった萩原さんとお仕事を始めることになったのでしょうか?

萩原さんとは、2012年日本選手権で決勝まで進出するも惜しくもロンドン五輪の切符を逃した直後のタイミングで一緒にお仕事をさせていただくことになりました。

ほぼ第一線を退くことを決めていた彼女とセカンドキャリアを歩むこととなったのですが、萩原さんは様々な問題に直面してこられていたので、競技以外の面でも世の中に対するインパクトを持ち、“共に新しい価値を生み出す”ということに一緒にチャレンジできると思い、契約をさせていただきました。

まずは選手のしたいことをマネジメントし、パートナーとしてそれを実現させる。単なるマネージャーとして、スケジュールを管理するだけではなく、アスリートのやりたいことを形にしていくということが私たちの仕事として捉えています。

世の中に影響力のある人たちがやりたいことをやる。アスリートは自分たちがやってきたスポーツを普及させることを第一に考えますが、私たちは現場で感じたことをもっと形にしていきたいという彼女の考えをサポートすることをしました。

具体的な取組みとしてはどのようなことをされたのでしょうか?

萩原さんは、あるテレビ番組をきっかけに山登りを趣味とするようになりました。山登りを通じて、飲み水の大切さを肌で感じるようになります。「水泳は贅沢なスポーツ」。競技者を引退したからこそ、水泳に対して違った視点を持つようになり、これに気付きました。水泳を楽しむ子供達が、水泳を出来るのは決して当たり前のことではないという考えを持つようになれば、水泳に対する思いも次世代では変わるのではないかと思ったのです。

水泳の指導をする前に水の大切さを伝えるところから始めるという考えの下、「水ケーション」という取り組みを始めました。水を通じて”コミュニケーション”する”エジュケーション”という考えから生まれました。

初めて形となって実現したのは山梨県北社市の白州小学校。子供達と水について勉強した後にプールに入って水泳教室を行いました。子供達は水が満足にあることに感謝しながら、水泳を楽しむことで心身共に健康へと導きます。これこそ萩原さんが水泳と向き合ってきたからこそ開けた道なのです。あくまでも私たちは彼女が自分で決め、取り組んできたことをサポートし、それに付加価値をつけていく活動を手助けしているだけです。

萩原さんは水泳選手としての価値だけではなく、水泳選手以外の部分での付加価値を加えることで、様々な方から必要とされる“買い手”の存在になっていくのです。アスリートの萩原智子がやってきたことをお手伝いさせてもらいながら、新たな価値を創造して世の中に需要を生んでいきます。

萩原さん
萩原智子さんによる「水ケーション」の様子

元バレーボール全日本選手山本隆弘さんとも引退後にパートナーシップを結んでおられますが、山本さんとのきっかけは?

山本さんとは上原さんと通じてお付き合いさせていただくようになったのがきっかけです。引退後、新たな趣味を求めていた山本さんは、自分に合う自転車を初めて作ってもらったのがきっかけで、ロードバイクを始めます。当時、201cmのサイクリスト、ということで話題になりました。

「元バレーボール全日本代表のエース・山本隆弘さんがロードバイク生活をスタート」(cyclist)

そんな中、以前から仕事をさせていただいていた明治さんが扱うプロティン・スポーツサプリメントのザバスをPRするために四国で展開をしているレディ薬局さんでトークショーをすることとなりました。このトークショーに参加したことにより山本さんは四国で様々なネットワークが広がっていきます。

トークショーの後、レディ薬局の三橋社長と会食にいき、「しまなみ街道で、大きなサイクリングイベントがあるから、ぜひ走ってみてはどうか?」ということで、懇意にされていた愛媛県の中村知事にお話され、山本さんもそのイベントに参加させていただくことになりました。

その次に繋がったのが、山本さんが所属していたパナソニックさんです。山本さんがしまなみ街道のロードバイクのイベントに参加していることを知ったパナソニックの企業スポーツセンターの方と四国支店長の方から「四国で一緒に何かできないか」という相談をいただきました。そして、パナソニックと山本選手は一緒には様々な地方自治体さんを表敬訪問し、お話をさせていただく中で、パナソニックバレーボール部の選手たちと一緒に四国でバレーボール教室を行うことになりました。この活動は、四国のバレーボール熱を盛り上げることになりましたし、2017年の愛媛国体に向けて地域密着を掲げていたパナソニックの良きPR活動なった、と喜んでいただきました。

山本さん1
山本隆弘さんとパナソニックバレーボール部の選手たちによるバレーボールの様子

アスリートの仕事を管理するのではなく、アスリートと一緒に新たな価値を創り上げていく、これこそがパートナーシップの形ですよね?

はい、まさにその通りです。スポーツはメディア、行政、企業、教育、どことも繋がることが出来ます。アスリートが生み出す価値とスポーツで多方面にアプローチをかけていくことが出来ます。それを考えるのが私たちであり、アスリートのセカンドキャリアを豊富なものにしていくことに繋がります。アスリート自身が既にしっかりと考えているからこそ、我々は“マネジメント”というよりはむしろ、“パートナー”としてサポートしていければと思っています。

私は幸運にもアプローチの仕方、工夫の仕方を知っているアスリートたちとパートナーを組ませていただいています。それぞれに苦労した時期があるからこそ、引き出しを多く持っています。その引き出しにある彼らの新たな夢や目標を少しでも形にしていくサポートを今後も心がけていきたいと思っています。

文:新川 諒 構成:SPOZIUM編集部