SPOZIUM(スポジウム)

VOICES

格上の南アフリカに勝利した日本。ラグビー日本代表の勝利の裏側にあったアナリストの存在

今回は日本スポーツアナリスト協会(JSAA)が昨年末12月19日に開催した「SAJ2015 −スポーツアナリティクスジャパン2015−」に参加してきました。今秋から始まる新バスケットボールプロリーグ・Bリーグのデジタル戦略や、Jリーグのトラッキングデータの活用事例などの講演があり、以前に
”スポーツ×データ”が新たな市場を切り開く。日本スポーツアナリスト協会の挑戦(前編)
”スポーツ×データ”が新たな市場を切り開く。日本スポーツアナリスト協会の挑戦(後編)
でも取り上げた通り、様々なレイヤーのデータがスポーツと密接に関わり出していることを改めて実感しました。

会場の様子

そんな中、今回のvoiceでは、日本ラグビーフットボール協会アナリストの中島正太氏の講演をまとめてみます。皆さんの記憶にも新しい先日のラグビーW杯での歴史的勝利の裏側には、アナリストの長期にわたるスカウティング戦略がありました。

大きく分けると、4つのフェーズになります。

①2012年秋 W杯で対戦する相手が決定。試合映像やデータ等の情報収集開始。
②2014年夏 プランニングミーティング開催。各コーチに合わせた詳細情報をまとめる。
③2015年1月 ゲームプラン構築。試合に必要な情報を厳選して分析。
④2015年4月〜 選手への落とし込み。選手に分かりやすく伝えるベストな手段を選択。

実は②のタイミングで、エディー監督とアナライズスタッフは、競技が異なるにも関わらず、日本バレーボール協会渡辺氏(JSAA理事)を訪れ、情報収集をされていたそうです。この辺りからもラグビー協会のアナライズに対する真摯な姿勢が伺えます。この時期から相手国の強み・弱みを把握し、どこを潰していくかを分析し、そして、その分析結果をどのように選手に落とし込むか、という戦略立案に取り組みます。

その分析の一つの例が、南アフリカに対するラインアウト対策です。南アフリカのトライパターンを分析したところ、半分以上がラインアウトを起点にしていることが判明。そこで、日本陣ゴール前でのラインアウトは極力避けるように、早いテンポ試合を進める、という作戦を立てました。

また、いかに優れた戦略・戦術を立てても、それを選手が理解していなければ、フルには戦えないでしょう。分析結果の選手への落とし込みが非常に綿密に練られていました。「トレーニング」という名称で、“ミーティングで観る”→“実際にプレーしてみる”→“フィードバックする”を繰り返すことで選手に戦術を落とし込んでいきました。(当たり前の話ですが、この徹底ぶりが素晴らしい!)

まず、練習前日の情報インプットのため、全員でミーティングを開き、室内練習場で動き方等を確かめます。

次に実際に練習でのプレー実践。ここでは、ドローンを使って練習風景を撮影します。

ドローン撮影

映像データを直ちにデータ化し、クラウドにアップロード。選手全員がタブレットにて自分の動きやチームの動きを見て、いかに戦術が浸透しているかを確認します。

クラウド利用

セミナーの総括で中島氏は今回の南アフリカ戦の勝利の要因の一つが準備の差にある、と話されました。選手のコンディション重視のあまり事前の試合を計画しなかった格上の南アに対し、3年もの長期間にわたって相手のことを研究し続けた日本。そして、その日本の研究を支えた映像、デジタル、クラウドを活用したアナリストの存在。

彼らの功績により、確実に日本のラグビー市場が大きくなっています。トップリーグ、大学・高校ラグビーの観客は軒並み新記録を更新していますし、私の回りにも、ラグビー愛が更に強まりJsportsを新規で契約したという既存のラグビーファンや、W杯のテレビ観戦をきっかけにラグビー(特に選手に!)に興味がわき、友人と国内のラグビーの試合を観戦したという新規のラグビーファンが大勢います。

もちろん、普段のラグビービジネスのマネジメントも重要ではありますが、一つの大きな勝利が国民全体を熱狂させ、国内ラグビー全体のムーブメントを生み出しているのだとすると、彼らスポーツアナリストの存在もますます重要になってくるのではないでしょうか。