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「相撲×サッカーの競技を超えたプロモーション」

文:新川諒 構成:SPOZIUM編集部

川崎市で19年ぶりとなる相撲春巡業「大相撲川崎ふるさと場所」が4月13日に開催された。

武蔵小杉駅からバスで向かった川崎市とどろきアリーナには、すでに多くのお客さんが詰め掛けていた。

平日水曜日の午前中から開催ということもあってか年齢層としては年配の方が多かったが、その中にも多くの外国人が目立っていた。そして午後の部が開始する頃には、地元の小・中学校の生徒たちが課外授業の一環として多く現れ、一気に会場は満席近くになった。

アリーナ外では、多くの催しが開催され、そこには川崎市をホームタウンとするプロサッカークラブの川崎フロンターレのロゴが多く目に入った。フロンターレ×相撲のグッズが販売されている売店や「川崎カラー」を前面に出した企画が会場の外を盛り上げていた。グッズの中には、フロンターレの選手を力士に変身させた限定デザインも並んでいた。さらには子供たちも楽しめるコラボ企画として、春日山部屋の力士がゴールキーパーとなる「どすこいPK」には人だかりが出来ていた。

<写真①:ゴールマウスを守る春日山部屋の力士たち> ゴールマウスを守る春日山部屋の力士たち

そして異彩を放っていたのは、川崎市民である総合格闘家の所英男と力士が握力で作り出す生絞りグレープフルーツジュースのブースだった。グレープフルーツが置かれたテーブルの後で力士がフロンターレ色とロゴに染まった台の上でそれを絞るシーンにはつい見入ってしまった。このように地元に縁のあるアスリート同士のコラボもこの日は随所で見られた。

<写真②:グレープフルーツを絞る所英男と力士> グレープフルーツを絞る所英男と力士

巡業行事は、初切や太鼓打分実演などの本場所では見ることのできない伝統的な行事の中で進められていた。力士たちが土俵へ向かうまでに待機している際には、ファンからのサインや写真の要望に応えていた。「会いにいける力士」として、普段土俵で見る表情とは違った様子でファンを楽しませていた。

老若男女問わず楽しめる雰囲気の中、この日一番の歓声はある「サプライズゲスト」の登場で絶頂を迎えた。

<写真③:花道を歩くふんどし姿の大久保嘉人> 花道を歩くふんどし姿の大久保嘉人

地元サッカークラブのJ1川崎フロンターレに所属するJ1通算最多得点を誇るストライカー大久保嘉人だ。巡業が開催された川崎市をホームタウンとする、他競技の「エース」が登場し、横綱への特産品贈呈式のプレゼンターとして土俵にあがった。

金髪にチームカラーの水色と黒の特注化粧回し姿はなんともミスマッチな光景だったが、それが地元ファンを喜ばせた。サプライズは大久保の登場だけに留まらず、なんとそのまま土俵に残って横綱白鵬と相撲を取ることになった。

会場に響き渡る「川崎フロンターレ部屋 大久保嘉人」という行事の声は耳に焼きついた。

結果は2度の取り組みで横綱白鵬が一流アスリート相手にも違いを見せ付け勝利したが、伝統ある土俵の上で相撲×サッカーの競技が交じり合ったのは活気的だった。

地方巡業の実態はあまり知られていないかもしれないが、勧進元(主催者)は常にネット上でも募集されている。

<写真④:日本相撲協会サイトより> 日本相撲協会サイトより

地方自治体、商工会議所、ライオンズクラブ、ロータリークラブなど各種団体が勧進元となり、大相撲一行を記念式典のイベントに呼んで開催することが出来る。個人名でも勧進元となるのは、可能なのだ。契約内容及び、事前準備に関しては担当の親方と進めていく流れとなる。

季節ごとに巡業開催場所は決まっているものの、いわば巡業の勧進元となるチャンスは誰にでもある。この川崎市で開催された巡業では建設・産業機器レンタル業者向けレンタル、設置工事請負を専門とするアール・アンド・アール株式会社が勧進元だった。

巡業を開催する勧進元だけでなく、スポンサー企業にとっても相撲巡業はビジネスチャンスが溢れている。

平日の日中に相撲観戦に来るファン層は高齢者が多くなる。巡業のスポンサーに付く企業はまさしくそのターゲットを狙っていた。チケットの裏面には、川崎市・横浜市に50施設を設けているデイサービス郷の広告が記載されていた。そして来場者に渡される案内袋の中には、介護からエンゼルケアまで一貫してサービスを提供する株式会社ケアサービスやあおぞら銀行が60代を応援する資産運用相談の専門銀行「ブリリアント・シックスティーズ」など相撲観戦に訪れるファンの年齢層を考えた対象となるターゲットを明確にしたプロモーション活動がおこなわれた。

<写真⑤:明らかに高齢者をターゲットにしたチラシ広告> 明らかに高齢者をターゲットにしたチラシ広告

地元企業だけではなく、会場内では一般社団法人の川崎ビーチスポーツクラブやかわさき産業親善大使の神崎順率いる10carats(男性がメインを務めるレビューショー「Fabulous Revue Boys」にレギュラーで出演するボイーズ)がロビーにブースを出していた。フロンターレだけでなく相撲×地元スポーツの競技、そしてエンターテイメントの世界を超えたプロモーションで会場を賑わした。

伝統ある相撲巡業の会場で地元川崎を代表するエンターテイナーやアスリートたちが集結した。その先頭に立っていたのは間違いなく、川崎にホームタウンを置くフロンターレであった。

<写真⑥:長年一緒に活動を続ける春日山部屋とのコラボ企画「イッツァ・スモウ・ワールド」> 長年一緒に活動を続ける春日山部屋とのコラボ企画「イッツァ・スモウ・ワールド」

翌日のスポーツ紙には、大久保嘉人と横綱白鵬の取り組みは大々的に取り上げられていた。少子化が進み、各競技団体がスポーツ人口の減少に悩む中、スポーツクラブが中心となってさまざまな「スポーツ競技を超えたプロモーション」がおこなわれることで新たな相乗効果を生み出すことを期待したい。

文:新川諒 構成:SPOZIUM編集部