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未完成のスタジアム 無限の可能性を秘めた市立吹田サッカースタジアム

文:新川 諒

ガンバ大阪の新スタジアム「市立吹田サッカースタジアム」のこけら落としから早2ヶ月が経過した。J1第9節川崎フロンターレ戦が開催された4月29日にやっとそのスタジアムへ足を運ぶことができた。

多くのメディアから絶賛されており、前評判は高く、私は心を躍らせながら新スタジアムを訪れた。
駅を抜けると目の前に現れたその巨大なスタジアム━━。
「・・・。」

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私の第一印象として、そのスタジアムはまだ「無」の状態であった。命名権も正式に決まっていないスタジアムは外観からはどこが正面かはわかりづらく、「フォトスポット」がまだない。

スポーツ観戦に訪れるワクワク感がスタジアム周辺ではまだ未完成の状態であった。飲食やチームグッズが売られている売店やショップの数もまだ少なかった。

チケット売り場では、カップルや若いファンが集まっていた。彼ら彼女らのお目当ては企画チケットだった。対象試合のこの試合では、「運だめシート・ペア」や「カップルシート」の当日引き換えがおこなわれていた。すでにこの企画チケットを購入していたファンはチケット売り場で実際に運試しの抽選をおこなっていた。このワクワク感を求めるのは人それぞれだろうが、ライトなファンにとっては楽しみ方の一つだ。

そして会場で目立ったのは、大学とのコラボレーションだった。試合前に子供達が楽しめる「キッズハウス」が設置され、そこは大阪国際大学のエンジョイパークと呼ばれている。大型連休のゴールデンウィーク初日でもあったこの日は、多くの子供たちが観戦に訪れていた。さらにはスタジアムのエコ活動を担っていたのが、追手門学院大学だった。スタジアム内外でファンたちのゴミを回収し、綺麗な環境を保つための活動をおこなっていた。

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外観をぶらりと歩いたのちに、スタジアムに足を踏み入れた。

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すると目の前に広がったのは、ヨーロッパのスタジアムを彷彿とさせる「サッカー専用スタジアム」であった。ファンと選手の距離が近く、日本のスタジアムでは良く見られる陸上トラックがなくサッカーを観るには絶好の空間となっていた。収容人数4万人のスタジアムの全てのスタンドには屋根がついており、雨の日にも多少濡れることはあっても安心して観戦出来る環境となった。

だが快適に空間を楽しむスタジアムとしては、まだ「未完成」の状態であった。スタジアムへ足を運ぶのは、その競技やチームの熱狂的ファンばかりではない。家族、恋人、友人、同僚などと楽しい時間を過ごすためにやってくるライトなファンも大勢いるはずだ。そしてビジネス交流の場としてG-VIPルーム(バックスタンド側の20人部屋)を使用する者もいる。

無料Wifiは開設されているものの、それを案内するものは見られなかった。さらにはパナソニック製の”大型”ビジョンもスタジアムの両側に設けられていたものの、座る場所によっては見にくい位置に存在していた。ビジョンの活用性やスタジアムのIT化もこれからというところだろうか。

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さまざまな飲食店が立ち並ぶコンコース。目立ったのは、どこもかしこも長蛇の列の連続だ。スポーツ観戦には「あるある」の光景なのかもしれないが、どこのトイレに行くのも、飲食店に行くのも、チームグッズを一目観るにも何十人も並ぶ列で溢れていた。コンコースの売店では、「ガンバ大阪応援企画」と題してスタジアム内でnanacoを使うとポイントが2倍になるという期間限定企画が設けられていた。今後長蛇の列を解消していくためには会計をスムーズにするプリペイドカードの使用を確立していくことも重要だろう。

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スタジアムグルメは大阪名物のたこ焼きやお好み焼きが並び、スイーツでは「ガンバ色」を全面に打ち出した青黒だんごやシャイニングブルーといったノンアルコールカクテルも販売されていた。

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このシャイニングブルーを購入した人にはサービスとして、光るLEDマドラーが付いてくる。日が暮れた夜の試合であれば、スタジアム内でおこなわれるLEDパフォーマンスで一緒に盛り上がることの出来る付加価値があるそうだ。 フィールド照明のオールLED化は日本初であり、素早い点灯消灯が可能となっている。残念ながら訪れた試合は13時キックオフのため、この企画は観ることができなかった。

グルメでは多少のガンバ色が見られたものの、グッズが販売されているスペースが少なかったのは印象的だった。多くのファンがユニフォーム姿で毎試合欠かさず訪れるなどコアなファンが多くいることでも知られているガンバ大阪だが、ライトなファンを巻き込むにはまだ至っていなかった。オフィシャルショップ「ブルスパジオ」とミュージアムの「ブルストリア」もスタジアムの2階に位置しており、人目に付きにくい。試合前後にはもちろん、そこにも長蛇の列ができる。

試合終了後には人の流れが交差しないように出口が制限されていた。混雑は生まれにくくなるのかもしれないが、そのためスタジアム外に出るまでも長蛇の列だった。

市立吹田スタジアム付近には、日本最大級の大型複合施設の「EXPO CITY」。さらには主に試合が開催される週末には大勢の人で賑わう万博記念公園人が集まる施設が一極集中しており、エンターテイメントのフィールドとして申し分はない。スポーツ観戦は家に帰るまでがその日の思い出として残る。たくさんの人が集まるからこそ、最後に「今日はめっちゃおもろかったわ〜!」と関西人をうならせるためには、試合終了後の交通面はこれから問題を洗い出し、行政と共に改善をしていく必要性が目立った。 この日も祝日であったため多くがEXPO CITY、そして万博公園を訪れていた。万博公園ではガレージセール/リサイクルフェアも開催されており、今後同日に各施設でイベントが開催される場合の人の混雑にも対応していく必要がある。

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市立吹田スタジアムの隣接された駐車場には台数制限があり、事前に前売り券が必要となる。隣に商業施設の「EXPO CITY」があるが、相乗効果を考え共に地域を盛り上げる取り組みを期待したい。試合開催日にはできるだけ混雑のないような駐車スペースの活用などは最寄駅がモノレールの万博公園前駅だけに限るため、今後の解決策が求められるだろう。

ちなみにこの日、市立吹田サッカースタジアムの隣に位置しているエキスポフラッシュフィールドでは、富士ゼロックスJ-Stars対サイドワインダーズのアメリカンフットボールXリーグの試合が開催されていた。ガンバ戦の観戦を終えて、駅へ向かう人たちの多くが興味を示し立ち止まっていた。競技の垣根を越えた絶好なプロモーション機会があっただけに勿体ない気がした。

まだまだ未完成であり、ガンバ色に染まっていない「無」の部分が多いスタジアム。これからコアなサッカーファンを対象にサッカーを観るスタジアムとして整備をしていくのか、ライトなファンを巻き込み誰もが楽しめる空間にするのかその方向性に注目していきたい。

ホーム側のゴール裏左右両端には、スタジアム建設募金への寄付者の名前が彫られたレリーフがある。市立吹田サッカースタジアムは多くのガンバサポーターの思いが詰まったスタジアムだ。

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まだ何色にも染まっていない市立吹田サッカースタジアムにどんなカラーが描かれていくのか楽しみだ。

文:新川 諒