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NTTのオリンピックを見据えた技術 「NTT R&Dフォーラム」体験レポート

文:SPOZIUM編集部

2020年東京オリンピックの協賛社として、最も早くに手を挙げたNTT。大会組織委員会会長の森喜朗元首相が「ロンドン大会最大の問題はサイバーテロだった。これをいかに防ぐかという視点で決めた」と語るように、固定通信から移動体通信、無線でのサービス提供に加え、サイバー攻撃へのセキュリティー強化の分野における同社の役割は非常に大きなものとなっています。

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今年2月、東京都三鷹市にあるNTT武蔵野研究開発センターにおいて開催された「NTT R&Dフォーラム」に参加してきました。今回は、オリンピックを視野に入れて研究開発されている技術を一部紹介したいと思います。

会場には合計100近くのブースがあり、各分野の最先端の技術が披露されていましたが、オリンピックに限らず広くスポーツ領域に貢献しそうな技術を中心に、大きく三方向①おもてなし、②競技力向上、③エンターテイメント向上、にまとめてみました。

【おもてなし】

まず展示会場に入ると、大勢の人でにぎわっており。どこから行けば良いか非常に困ったのですが、そこで威力を発揮したのがこのアプリ。

混雑マップ
混雑マップ

最先端のビッグデータ分析技術を用い、現時点で混雑状況を把握することができ、スムーズな移動計画を立てることができました。ちなみに、こちらは直近30分前からのデータで人流予測ができるそうなので、テーマパークや単発の大型イベントにも役立ちそうです。

最初に訪れたブースでは、屋内外を繋ぐシームレスな地図ナビゲーションシステムが紹介されていました。昨今グーグルマップなどの地図アプリの進化のおかげで行きたい場所にスムーズに移動できるようになりましたが、新宿駅や東京駅といった大型施設内の移動には少し困ることがあります。しかし、このシステムでは、施設内の複雑な地図も立体的に表記されており、屋外から屋内へのスムーズな移動が可能となります。これさえあれば、東京のことを知らない地方の方や海外の方でも不自由を感じることなく、都内やオリンピック会場を移動することができそうです。

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シームレス地図

また、次のブースでは進化した通訳技術を見ることができました。話す人のイントネーションに合わせて会話の文脈を理解し、スムーズな会話を実現するというものです。「何を買いに行きますか?」というコンピュータの質問に対し、「ジャケットかな」というこちら側の回答も、語尾のイントネーションが上がると「ジャケットにしようかどうか迷っている」というニュアンスになりますし、イントネーションが下がると「ジャケットにしようと思っている」というニュアンスになります。コンピュータがこの微妙な差異を感じ取って上手く会話を展開「してくれます。こういった通訳ロボットが開発されると、海外の方の利便性は向上するでしょう。

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通訳システム

【競技力向上】

競技力向上に役立ちそうな技術について、まず一つ目が、こちらの脳化学に基づくスポーツ強化システムです。これまでも選手の動きに関する情報は様々な技術やサービスで取れていたかと思いますが、この「hitoe」というウェアラブルデバイスを通じて、選手の技、心といった、選手の脳の状態について解明することを目指しています。

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導電性ファブリック ”hitoe”

具体的に言うと、筋肉の活動を音で把握することで、正しい体の使い方を把握したり、

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筋活動の様子

心拍の測定により試合本番での緊張感が可視化できます。

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心拍数の状態

これら勝つための脳情報処理のエッセンスを解読し、データを蓄積することで、本番で力を発揮するための“使える”トレーニングの実践へと繋げる、というシステムです。まだ、技術は開発中とのことでしたが、NTTが抱えるアスリートやチームでこのシステムが実証されれば、利用範囲はかなり広がるのでは、と想像が膨らみました。

そして、最近ブームとなっているVR(Virtual Reality)です。様々なセンサーにより取得した情報に基づいて、実際にフィールドでプレーしているかのような映像を仮想空間に投影します。

私もピッチャーの投げるボールを打席に入って体感してみました。

ばった
VRバッター体験

この技術は、競技者目線では強化に使えますが、一方でユーザー目線ではエンターテイメントコンテンツとしても十分にポテンシャルがあります。

海外では、Gatorade | 360° Bryce Harper Virtual Reality ExperienceSkate with the NHL All-Star Game players in virtual realityといった事例が既にあるようなので、今後業界全体が更なる進化を遂げていくことが予想されます。

【エンターテイメント】

そして、最後に紹介するのが、競技や講演を遠隔地に伝送するイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」です。一言で言うと、3Dパブリックビューイングなのですが、想像を超える衝撃体験でした。説明するより見ていただいた方が早いので、まずはこちらの動画をご覧ください。

こちら、デモンストレーションとなった空手の演舞です。選手が別会場で行っている演舞が実際こちらの会場にて上映されています。本当にそこにいるかのような感覚です。VR体験も新しい映像体験でしたが、これはゴーグルを使用する必要がありません。つまり、ゴーグルを装着する個人の閉ざされた世界ではなく、その空間に存在する他の人と一緒にこの映像体験を共有することが出来る、という点において非常に斬新な体験でした。

現時点では一人の動きにフォーカスした上映ですが、今後技術が進化して、複数人の動きを捉えることできるようになれば、サッカーや野球等のリアルな3Dパブリックビューイングも可能となるでしょう。ただ一方で、ここまでリアルに再現できると、スタジアムに行く必要がなくなるという可能性すら出て来るように思われます。また、スポーツ以外のライブコンサートの映像も非常に臨場感があって、スポーツ以外のエンターテイメント産業への活用も十分にあるように思われました。

記事の冒頭で触れた通り、これらNTTの技術は、2020年の東京オリンピックの大会運営や競技の質、エンタメ性の向上に貢献することを期待させると同時に、2020年以降も国内外に留まらず、更には、スポーツ以外の産業へに展開される可能性も感じました。ただ、こうした技術をいきなりオリンピック本番にて披露するのはリスクが大きいので、既にスポンサーシップしているコンテンツ、あるいは、企業スポーツとして保有している選手、チームを上手く活用しながら、徐々にユーザーに浸透させていくのでしょうか。いずれにしても、近い将来のアクティベーション展開が非常に楽しみな体験でした。

文:SPOZIUM編集部