SPOZIUM(スポジウム)

VOICES

家族で余暇を楽しみたい場所は?野球場!!

突き抜けるような青空、青々とした芝生、香ばしい焼きたてのソーセージの匂い、冷えたビール、子供たちがはしゃぐアスレチック広場、家族の笑い声…。米国ペンシルベニア州のアレンタウンという街に、多くの人々が余暇を楽しむ場所がある。マイナーリーグ所属の野球チーム、リーハイバレー・アイアンピッグスのホームスタジアム、コカ・コーラ・パークだ。

アイアンピッグスはメジャーリーグのフィラデルフィア・フィリーズ傘下におけるマイナーリーグトリプルAのチーム。米国メジャーリーグのチームは、マイナーリーグのトリプルAからルーキーリーグまでの7段階の階層のうち複数の階層のチームと選手育成契約を結び、その下部組織としている。

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コカ・コーラ・パークの様子(筆者撮影)

メジャーリーグのフィリーズは傘下のアイアンピッグス所属選手に対して選手育成契約を結び、契約選手に対する年俸を支払っているが、選手育成契約外の選手の年俸やそれ以外の運営費は全てアイアンピッグスが自前でまかなって経営をしている。

残念ながら競技自体はどうしてもメジャーリーグには届かないレベルであるものの、アイアンピッグスのホームスタジアムであるコカ・コーラ・パークは毎試合満席になる。その根底には観客を楽しませようというシンプルな理念があった。

まずゲートをくぐって感じるのはテーマパークを訪れたときのようなワクワク感。この日のテーマは「パイレーツ」で、球団スタッフが海賊やお姫様に扮してお客様をお出迎えする。記念撮影に応じたり、そのままイベントの準備をしたり、スタッフもお客様をワクワクさせる雰囲気づくりに一役かっている。

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お姫様に扮した球団スタッフ(筆者撮影)

空が大きく見える開放的な球場をぐるりと一周すると、またワクワクする仕掛けがたくさんある。グラウンドへの距離の近さ、様々な種類の食事のワゴンが並ぶコンコース、外野には南国風の大きなバーカウンターに子供が遊べる遊具があるアスレチック広場、そして外野席に座席はなく芝生が広がっている。

家族連れがここでシートをひいて寝そべりながら野球を観戦しているのがなんともゆったりとした雰囲気だ。バックネット裏にVIPシートやスイートルームなどの高級な席種もあるものの、多くの人が気軽に楽しくここでの時間を楽しんでいる様子である。

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外野芝生席の様子(筆者撮影)

球場だけでなく、そこで行なわれるイベントも訪れた人々をワクワクさせている。試合開始約20分前には予め応募した人々が実際のマウンドに立って始球式を行なうことができる。

さらに毎回のイニング間、そして試合終了後に至るまで思わず大人も子供もはしゃいでしまうような面白いイベントが多数行なわれている。むしろイベントの合間に野球の試合が行なわれているかと錯覚するほどだ。

それぞれのイベントではスポンサー企業の名前も紹介される。球団関係者に聞くともちろんスポンサー企業に合わせてつくられたイベントもあるものの、多くは球団が行なっていた観客に人気のあるイベントにスポンサーがついたケースだという。

この日は特別に試合後に花火もあがり、多くの家族連れが最後の最後までスタジアムで過ごす時間を楽しんでいた。今ここで挙げたのは全体のほんの一部であり、観客の目に付くもの全てが細部に至るまで、観客が最大限楽しめるように工夫されていた。

スポーツ球団には様々なステークホルダーがおり、それぞれのステークホルダーに合ったサービスが必要である。観客への向き合い方、スポンサーへの向き合い方、その他にも行政やメディア、親球団など様々な関係性があり、ときに利益相反が起こることもある。どのステークホルダーも球団にとって大切な存在だが、球団の個性を生かした工夫で多くの観客を魅了し、球団の価値を高める努力は、間違いなく全てのステークホルダーの大きなメリットにつながる大事な要素だとアイアンピッグスを観戦して改めて思った。