SPOZIUM(スポジウム)

ACTIVATION

航空カテゴリのホットボタン(後編)

文:鈴木友也

前回のコラムでは、航空カテゴリの業界特性を整理した上で、その代表的な“ホットボタン”について解説しました。今回は、そのホットボタンを踏まえた具体的なアクティベーション事例をご紹介しようと思います。

2020年の東京オリンピックの航空カテゴリについては、既に今年6月にANAとJAL両社が「オフィシャルパートナー」として大会組織委員会と契約を結んでいます。同じオリンピックを例に挙げると、2012年のロンドンオリンピックでは、ブリティッシュ・エアウェイズ社(以下、BA社)が「ナショナル・パートナー」として契約を結び、同大会の公式エアラインパートナーとして協賛活動を展開しました。

以下に、BA社が展開したアクティベーション事例をご紹介しましょう。

ベッカムに見守られて聖火を空輸

オリンピックと言えば、中でも最も注目を集めるイベントの1つが聖火リレーです。世界中から注目を集める聖火リレーは、コンテンツホルダー(=大会組織委員会)にとっても非常に重要で有効な協賛プラットフォームになるため、想像力を駆使した協賛スキームの設計が求められる部分です。

BA社は、「FireFly」(蛍)と名付けた特別機(五輪の聖火にちなんで金色にラッピングされている)を用意し、アテネからの聖火の空輸を担当しました。オリンピックにちなんで「BA 2012」の機体番号を与えられた特別機が、聖火リレーの先陣を切ったのです。

アテネで実施された聖火の引き渡し式には、サッカーの元イングランド代表主将デービッド・ベッカム氏やアン王女らが出席。その後、聖火はファーストクラスにてイギリスに持ち帰られました。イギリスの玄関口=ヒースロー空港への聖火の到着は大きな反響を持って迎えられ、テレビや新聞などで大々的に報じられました(聖火到着の様子はこちら)。

前回のコラムでも解説したように、企業認知度を高め、ブランド好意を形成することは航空カテゴリの代表的なホットボタンの1つです。聖火の到着はイギリス国内のみならず、メディアを通じて世界中に報じられることになり、BA社はオリンピック開催前から大きな露出を確保することに成功しました。

特別メニューの開発で他社の利用客も獲得

また、オリンピック大会期間中には国内外から多くの観光客が訪れます。航空会社にとってみれば、新規顧客獲得の絶好の機会になるわけです。

BA社は、大会開催期間に合わせ「オリンピック特別機内メニュー」の開発を進めました。開発を依頼されたのは、カリスマシェフのサイモン・ハルストーン氏とヘストン・ブルメンタール氏。両氏は、前回ロンドンでオリンピックが開催されたのが1948年だったことにちなんで、当時使われていた機内食を現代風にアレンジした2つのメニューを考案します。

s_00007_1
s_00007_2
出所:http://greatbritishchefs.tumblr.com/post/20105252893/simon-hulstone-british-airways-london-olympics-menu

例えば、「1964年の東京オリンピックが開催された当時の機内食をアレンジした特別メニューが食べられる」と言われたら、「一度は食べてみたい」と思ってしまうのではないでしょうか?サービス自体での差別化が難しい航空カテゴリにおいて、これは非常に強力なブラッドスイッチ(他社からの顧客獲得)誘因になります。

ファーストクラスをもっと身近に

また、BA社はロンドン市内に同社のファーストクラスのサービスを体感できるポップアップ・レストランも設置しました。機内をイメージしたレストラン内はブルーの清潔感ある雰囲気で統一され、普段はあまり縁のないファーストクラスの食事を堪能できる機会を提供します。

s_00007_3
出所:http://www.bookatable.co.uk/blog/british-airways-pop-up-restaurant

このレストランを監修しているのも、先に紹介した機内特別メニューを開発したハルストーン氏。同氏の持つレストランはミシュランガイドにも掲載されており、注目度は抜群です。普段はなかなか経験できないファーストクラスのサービスを体験できる機会を提供することで、同社の存在をより身近に感じてもらうことができるのです。

このように、BA社はロンドンオリンピックを活用して、「企業認知度の向上」「他社からの顧客獲得」「サービス体験機会の提供」といった様々なホットボタンを押す包括的な協賛スキームを設計して実効的なアクティベーションを展開していったのです。

文:鈴木友也