SPOZIUM(スポジウム)

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野球界のプロアマを繋ぐアクティベーション

甲子園も4強が出そろい、暑さ以上に盛上がってきました。元ロッテ監督の山本功児氏を父に持つ九州国際大付属高校の山本選手が二打席連続、そして、二試合連続ホームランを打って話題になっていますが、彼はお父さんの血を受け継ぎスラッガーになるべくしてなったのでしょうか?それとも、お父さんの個別指導を受けスラッガーになったのでしょうか?ここには野球のプロアマ問題という根深い問題が存在しています。今回はこのプロアマ問題について考えてみました。

日本では、プロ野球OBは学生野球の指導をしてはいけない、という不思議なルールがあります。元々、1961年の柳川事件という事件がきっかけで、社会人野球はプロ野球との関係を断絶してしまいました。その動きに学生野球界も同調し、プロ野球OBは学生に対し、野球を指導できないようになりました。(厳密に言うと、一般の生徒には指導できますが、野球部に所属する生徒には指導できない、という状態でした。)

柳川事件から23年経った1984年にようやく、プロ引退後10年間教職勤務を経験し適性検査を通れば学生を指導しても良い、というルールができます。ただし、これはあまりにも長期間過ぎました。40歳で引退した選手が高校野球の監督になるのに10年以上かかっては、現役時代に磨いた野球技術・理論もさすがに通用しなくなってしまうでしょう。

その後、必要な教職期間が10年→5年(1994年)→2年(1997年)に短縮され、2013年にやっと教職に就かなくても、3日間の研修と適性検査を受けるだけで、学生の指導資格を得られる、ということになったのです。

このプロアマ断絶の歴史の詳細はこちら↓

不条理なプロ・アマ断絶から52年。プロ野球OBの学生指導全面解禁で日本野球はどう変わるか(ダイヤモンド・オンライン)

プロがアマに指導できるからといって、単純に野球人口が増加するか、と言われると、そこには別の問題もあると思いますので、一概にそうは言えないと思います。ただ、学生が一流の世界を経験したプロの指導を受けられることのメリットは、競技能力の向上はもちろん、ケガの予防、メンタルの強化など、多岐に渡ります。また、プロとアマの距離が近くなることで、アマにとって野球の魅力が増大する(すなわち、野球の世界に入りやすくなる)、そして、プロにとってもセカンドキャリアの道が開ける、というメリットも考えられます。もちろん、学生野球には教育的な側面がありますので、プロ野球OBが専任の監督・コーチになることの議論は重ねる必要があるかと思いますが、少なくともプロが指導できるようになる、ということ自体は非常に大きな意味を持ちます。

近年、野球人口の減少という大きな問題に危機感を感じ、プロアマ一体となって野球の魅力を発信していこう、という動きが見られますので、いくつかピックアップしたいと思います。

まずは、こちら。プロ野球選手会による「夢の向こうに」プロジェクト。2003年からスタートしたこのシンポジウムでは、プロ野球選手が高校球児の質問に答えながら指導をしています。

プロ野球と高校球児の架け橋 「夢の向こうに」の意義とは(Full-count)

 

次に、侍ジャパンの設立です。プロの選手達から構成されるトップチームと同じユニフォームを着て、日本代表として戦える、ということは子供達には大きな誇りとなるのではないでしょうか。僕もセミナーで侍ジャパン設立に当たっての構想・戦略を拝聴する機会がありましたが、その時の衝撃は今も覚えています。

古くさい野球界が、やっと変わり始めた(東洋経済オンライン)

 

そして、最近では、プロ野球球団が高校野球と一緒になって野球ファンを増やそうとする活動も生まれています。北海道日本ハムファイターズは、「高校野球100年」を記念して札幌ドームで夏の甲子園北海道前出場校写真パネル展を開催したり、ファイターズ選手の高校球児スペシャル映像を札幌ドーム大型ビジョンで放映しています。これらは、プロ野球ファン、甲子園ファン関わらず、野球ファンにとってたまらないコンテンツでしょう。

 

また、今年から朝日新聞と朝日放送が共同事業で運営しているバーチャル高校野球でも侍ジャパンから高校球児に向けた応援コメントがスペシャルコンテンツとして提供されています。

バーチャル高校野球「侍ジャパンスペシャル動画」

 

冒頭の山本選手がお父さんから個別指導を受けているかどうかは定かではありませんが、もし、長嶋茂雄が長嶋一茂を、野村克也が野村克則を、家で個別指導をしていたら、彼らは親のDNAだけでなく偉大な技術も受け継いで、プロ野球の世界でもっと活躍をしていたかもしれません。少子化、サッカーの台頭など、野球人口の減少が危ぶまれている現状において、一人でも多くのファンやプレーヤーを生み出すのは、こういったアクティベーションなのではないでしょうか。