SPOZIUM(スポジウム)

ACTIVATION

金融カテゴリのホットボタン(前編)

文:鈴木 友也

前回のコラムでは、航空カテゴリの業界特性やホットボタン、アクティベーション事例について整理しました。航空カテゴリに続く第二のカテゴリとして、今回は金融カテゴリをご紹介します。

2020年東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナー13社(2015年8月時点)のうち、実に5社が金融関係の企業です。金融と一言で言っても広範な事業領域がありますので、通常はさらにサブカテゴリをいくつか設けて排他性を確保することが一般的です。

ちなみに、前述の5社については、以下のサブカテゴリに分けて契約が結ばれています。また、みずほと三井住友については、特例として銀行カテゴリでの2社共存となっています。

■東京海上日動火災保険株式会社:損害保険
■株式会社みずほフィナンシャルグループ:銀行
■株式会社三井住友フィナンシャルグループ:銀行
■野村ホールディングス株式会社:証券
■日本生命保険相互会社:生命保険

金融カテゴリの業界特性

では、金融カテゴリでスポンサーシップの仕組みを検討する上で、念頭に置くべき代表的な”ホットボタン”は何でしょう?そのヒントを考えるべく、まずは金融業界特有の課題・特性をおさらいしてみましょう。

日本の金融機関は戦後長らく政府に保護された、いわゆる「護送船団方式」の下で経営の安定化が図られていました。しかし、横並び体質は結果的に金融機関の企業競争力を弱めることにつながり、バブルの崩壊後は国際競争力を取り戻すべく「金融ビッグバン」による金融制度改革が実施されます。2002年以降には、銀行業・保険業・証券の各代理業解禁など規制緩和が進行していきました。

規制緩和により業態を超えた乗り入れが可能になったことに加え、日本社会が人口減少に転じていることもあり、縮小しつつあるパイを競合各社が奪い合う熾烈なシェア争いが展開されています。一方、長らく続いた横並び体質によりサービスや価格自体での差別化が図られにくく、ブランド力の勝負になりがちな点が大きな業界特性の1つといえます。

保険・証券業務では、顧客から商品の内容が見えにくいうえ(例えば、損保なら対象は自動車、住宅、体、生活全般など多岐に渡る上、対象の中でさらに補償内容・条件が細かく分かれているのが一般的で、専門家のアドバイスなくしてサービス内容を正確に把握することは難しい)、近年サービスの多様化が進んでいるため、商品・サービスを顧客に理解してもらうことが難しい点(商品の無形性)も特徴的です。

また、保険業務については、生命保険ではその販売を多くの外交員(いわゆる「生保レディ」)が担当していることや、損害保険では代理店が販売チャネルとして大きな存在感を示していることも業界特性として挙げることができるでしょう。

こうした業界特性を踏まえると、「サービス自体での差別化が難しい中で熾烈なシェア争いを強いられている」ことや、「サービス内容が分かりにくい」「外交員や代理店が販売の中心になっている」といった課題・特性に対して解決・支援策を探ることがホットボタンを考える上での大きな方向性になりそうです。

金融カテゴリのホットボタン

サービス自体での差別化が難しい金融カテゴリのような規制産業では、「企業認知度の向上・ブランド好意の形成」が代表的なホットボタンになります。これと併せて、新規顧客獲得のために、「潜在顧客(特に銀行口座未開設、保険未加入の若年層)とのタッチポイント創出」により新たな顧客開拓の機会を作りだすことも有効となるでしょう。

メディア・リテラシーの高い若年層の取り込みという意味では、ソーシャルメディアを活用するなどにより「口コミや紹介を誘発する仕組みの構築」も有効なホットボタンとなるでしょう。

また、ブランドスイッチ(他社からの乗り換え)を促すために「付加的サービスの提供」も有効なホットボタンとなります。特にスポーツ組織は情熱的なファンとの“感情的な絆”を有しています。サービス自体での差別化が難しい中で、試合への招待券配布やグッズ・飲食の割引特典などは、地元ファンを顧客化する強い誘因になるはずです。

外交員や代理店が販売チャネルの中心になっている点については、「外交員や代理店の士気向上」や「代理店を巻き込んだプロモーション機会の創出」につながる販売促進策の検討が有効となるはずです。

次回は、こうしたホットボタンを踏まえた上で、実際の金融カテゴリの協賛事例をご紹介します。

<金融カテゴリの主なホットボタン>

企業認知度の向上
企業の認知度を高めたり、ブランド好意を形成することで新規顧客獲得につなげる

潜在顧客へのタッチポイント創出
潜在顧客、特に銀行口座未開設・保険未加入の若年層との間に接点を創出し、顧客開拓の機会を作りだす

口コミや紹介を誘発する仕組みの構築
ソーシャルメディアの活用などにより、商品やサービスの口コミを誘発する仕組みやプロモーションを設計する

付加的サービスの提供
ファンとの間に強い結びつきのあるスポーツの特性を利用し、ファンを顧客化することでブランドスイッチを促す

外交員や代理店の士気向上
販売チャネルの中心を担う外交員や代理店のモチベーションを維持・向上するためのリワードやプロモーションを企画する

代理店を巻き込んだプロモーション機会の創出
代理店が商品を販売しやすいプロモーションを企画し、販売促進を促す

文:鈴木 友也