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サンフランシスコ大学マイケル・ゴールドマン教授が語る 「東京オリンピックスポンサーシップについて」(前編)

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部

アメリカUniversity of San Francisco のAssistant Professorとして、スポーツマーケティングなどの分野で数々の論文を発表している南アフリカ出身のMichael Goldman教授。東京オリンピックに対する海外からのイメージや年々あがるスポンサーシップの価格、これに対して企業やブランドはいかに投資した分をしっかりとリターンとして生み出すことができるのか、その投資効果の測定について、また、スポンサーシップの獲得は東京オリンピックや日本のスポーツ産業にどのような影響を与えるのかについて、教授に迫ってみました。

田中(以下、T): ではGoldman教授、始める前に簡単に教授の経歴を教えてください。

Goldman教授(以下、G):この機会をありがとう。私は南アフリカ、ヨハネスブルグのUniversity of Pretoria’s Gordon Institute of Business Science というところで10年ほど過ごし、2010年の南アW杯期間中にMTNグループの南アW杯でのスポンサーシップアクティべーションの戦略立案に携わりました。また、大学のMBAコースにて開催国に対するW杯から生まれる社会的・経済的効果およびブランディング効果の向上について教えていました。

W杯後は南アフリカコカコーラと共に、W杯が与えたインパクトについて調査を行いながら、FIFA マネジメントのインストラクターたちに教育・支援方法論について講演なども行っていました。

2013年からはアメリカのUniversity of San FranciscoでSport Management を教えています。現在はアメリカ、南アフリカ、ケニアのスポーツ産業で、学生やビジネスマン、および起業家の顧客 の維持と獲得を支援する一方で、スポーツマーケティングやスポンサーシップなど題材に、CNBC Africa・CCTV News・KCBS Radioアフリカ中心に、ヨーロッパやアメリカのメディアにてもコメンテーターとしても活動しています。

T:まずは、海外から見た東京オリンピックに対するイメージをお聞かせください。

G:海外から見た感じだと、今のところ東京オリンピックはワールドクラス、モダン、テクノロジーを駆使したオリンピックに感じます。

T:現在、東京オリンピックはスポンサーシップの収入において新記録を更新しています。そのことについてどうお考えでしょうか?また、日本のスポーツ界にはどのような影響が与えられるでしょうか?

G:スポンサーシップでの収入は、オリンピックにおいてはいいことだと言えます。それらの収入は世界中で行われているオリンピックスポーツへの投資を可能とします。重要となるのは東京オリンピック組織委員会およびIOCが責任をもって長期的に、また確実にこの投資されたものを資源とし、優先的に選手たちへの支援および社会的発展に当てることだと思います。

日系企業のスポンサーとしての参入は重要ですが、同時にその地域の他のスポーツや音楽、芸術の分野での活動の“クラウドアウト”(投資先の一極化)を引き起こすおそれがあります。もし東京オリンピックのゴールドパートナーやオフィシャルパートナーなどが彼らのマーケティング予算を他のイベント・活動から遠ざけ、オリンピックへ集中させるとなると、東京オリンピックのスポンサーシップは日本のスポーツ産業全体として見たときネガティブな方向へ傾くこともありえます。

東京オリンピックは他の企業に将来的にスポーツへの投資を検討させるいい機会になりえるでしょう。そのためにはこれらのスポンサー企業が高いレベルでの直接的・間接的リターンを示すことが大切になります。

T:数十億から150億にものぼるスポンサーシップへの投資は、企業・ブランドに対して見返りはあるのでしょうか?

G:スポンサーシップ権利の費用はだいたい、現在の市場相場・利益に対する見込み・スポンサーシップ市場内での競争の三つの点を考慮して設定されます。より重要なのは実際のその権利費用より、権利の内容とその権利を使ってどう宣伝していくかのアクティベーション・パッケージがどのようにその契約に組み込まれているかです。東京オリンピックのスポンサーシップからブランドの費用対効果を増加させるためには、スポンサー企業はその割り当てられた予算から直接的・間接的な効果をできるだけ獲得できるよう、確実に割り当てることが重要です。

例えば、スポンサーは“loaded”権利(契約の中にメディアの露出を保証し、費用もスポンサー料にいれる)を含む必要があります。これをわかりやすく説明すると、おもちゃ屋さんでラジコンカー買ったとき電池がついていないとします。おもちゃを購入するだけでなく、それを使って遊ぶには電池が必要となります。スポンサーシップも同様に権利を買うだけでなく、アクティべーション(電池)が必要となります。この電池がラジコンを購入したときに一緒についてくる契約内容が“loaded”権利(メディアなどの保証)となるわけです。

さらなるアクティベーションに対する費用 は必要となるでしょうが、ブランドはこの権利を元々彼らが持っているメディアの枠や、広告への増強へと使うべきだと考えます。30を超えるブランドが選手、ファン、視聴者などの興味をひきつけるために競争を繰り広げていますが、ここで企業にとって決定的に重要となるのは、ターゲットとなる顧客、視聴者セグメントは誰なのか、伝えたいコアとなるメッセージは何なのか、どこでアクティベーションしていくのか、ユニークかつはっきりとしたマーケティング戦略を持つことです。ただ単に権利を買取り、ブランドのロゴを背景に入れてもらう1つの企業として終わるのでは、ビジネスとしての価値は達成されないでしょう。

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部