SPOZIUM(スポジウム)

ACTIVATION

サンフランシスコ大学マイケル・ゴールドマン教授が語る 「東京オリンピックスポンサーシップについて」(後編)

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部

前編に続き、University of San Francisco Assistant ProfessorのMichael Goldman教授に今スポーツ界で問題視されているアンブッシュマーケティングについて聞いてみました。アンブッシュマーケティングをおこなう企業・ブランド、またそれから自分達のスポンサーシップの権利を守るブランドなど興味深い内容となっております。現在、世界ではアンブッシュマーケティングも仕掛ける方もそれを阻止する方も戦略的におこなっているそうです。

田中(以下、T):東京オリンピックではいくつかのスポンサーシップカテゴリーにおいて二つの企業が一つの枠をシェアしている形ですが、これまでの一業一社のスポンサーシップの流れとは異なります。これはいいことなのでしょうか?また共存すること自体は可能なのでしょうか?

Goldman教授(以下、G):おそらくお互いにビジネス価値やイメージを高めあえる企業同士で行われた場合には可能だと思いますが、クリエイティブなアプローチが求められます。しかしながら、これは競争が激しい業界などでは役員の決定を得るのは難しいでしょう。とても多くの企業が注目を集めるために競いあっているのが現状です。

カテゴリー内での競争は東京オリンピックではあまり重要ではありませんが、それぞれのブランドがしっかりとブランドの立ち位置を獲得して、選ばれたターゲットとなる視聴者にそのブランドのことをしっかりと話題にしてもらうことが求められます。

T:欧米の場合、いくつかの企業は敢えてオリンピックのスポンサーにならず他のメガイベント(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)や、規模的には少し小さくなるイベントのスポンサーやプロチームのスポンサー(欧州サッカーチームなど)となる選択をすることがあります。これは同様の利益や目的を達成できる一つの異なる戦略として有効となるのでしょうか?

G:メガイベントを意図的に無視することは十分にあり得る戦略です。特にターゲットとなるセグメントが他のアクティビティに興味がある場合ですね。

例えば、オリンピック開催地の近隣諸国においてキャンペーンや他のイベントを使い、開催国およびその都市内のメガイベント開催中の人ごみや混乱、物価の高騰を避けたい住民を観光客として魅きつける。同様にオリンピックファンでない人間をターゲットにして、他のスポーツで比較的低めのスポンサー費用で利益率が高いスポンサーシップを作り出す事も時おり可能でしょう。

T:アンブッシュマーケティングは時々問題として話題にあがりますが、教授の意見ではIOCや東京オリンピック組織委員会はオフィシャルスポンサーをどのようにしてアンブッシュから守るか対策をとるべきだと考えますか?

(アンブッシュマーケティング;スポンサーでない企業がオリンピックやメガイベントとイメージなどを共有することでスポンサーシップの費用を払わずにメディアの露出やマーケティング効果などを得ること)

G:どんなメガイベントも、様々な戦略を投じることで、その放映権やスポンサーシップなど、それぞれの権利を守るべきだと思います。東京オリンピックは広大なブランドプロテクションガイドラインが設定されています。それらはスポンサー企業のために一般的に主流となるような、細部にわたる映像や画像素材、およびオリンピック関連の言葉の組み合わせを法的に守っています。

重要なのはこのガイドラインを政府が多面的および法的にバックアップすることです。スポンサーは組織委員会やIOCを時おり頼らざるを得ないことがありますが、最近ではスポンサー自身が自分たちでクリエイティブなキャンペーンに投資しそれを展開することで、自らスポンサーシップをアンブッシュマーケティングから守っています。

T:アンブッシュマーケティングはこれからいくつかの企業・ブランドにより頻繁におこなわれたり、ビジネス戦略として活用されるのでしょうか?

G:オリンピックスポンサーではない企業・ブランドは、東京オリンピックの中で彼らのビジネス戦略のためにアンブッシュマーケティングを試みるといえるでしょう。

これらの中で、ある企業は先ほどのガイドラインや法的な部分での一線を超えてしまい、結果的に捜査や起訴に至るということはあります。一部の企業やブランドは先ほどのガイドラインをもとに、一線を越えることなくオリンピックとイメージを巧みに共有したり、なんらかのブランド力の向上効果を得たりするでしょう。

こうしたアンブッシュマーケティングアクティビティはオフィシャルスポンサーからスポンサー価値を損なわせます。ある研究ではアンブッシュマーケティングはリスクを大きくともなう戦略ではあるが、これらを行うことでブランドや企業は利益を得られると言われています。

(インタビューを終えて)

東京オリンピックにむけて続々とスポンサーも決まり、様々なマーケティング活動がおこなわれていく一方で、欧米の企業にみられる、”敢えてオリンピックのスポンサーにならず”に他のイベントのスポンサーになるなど、効率的なマーケティング活動をおこなう企業も出てくると思います。

よく話題となるアンブッシュマーケティングなどもこれらの企業によって一線を越えずにして、クリエィティブにおこなわれるでしょう。そこでスポンサー各社がどのようにして自分たちのスポンサー権利を守り最大限に活かしていくか、ということに注目していきたいと思います。

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部