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サンフランシスコ大学マイケル・ゴールドマン教授が語る 「メガイベントとスタジアムの関係性」(前編)

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部

今週はMichael Goldman教授に日本でも問題となっている、新国立競技場の建設問題やオリンピックの開催費用の高騰などについてインタビューをしました。
また日本のみならず、世界におけるメガイベント開催時の費用や、スタジアムおよびそれに準ずる施設の建設についてどのように考えているのか。サステナビリティ(持続可能性) とレガシー(遺産)をキーワードに世界でのトレンドについてお話して頂きました。

田中(以下、T):教授もご存知の通り、新国立競技場の建設に関する意思決定が二転三転し、日本でもスポーツ界のみならず様々な場で議論を生んでいます。このことについて、教授の意見をお聞かせください。

Goldman教授(以下、G):メガスポーツイベントの競技場の建設費は、高額になる場合が多々あります。特に、その競技場が街の真ん中で建設されるとなるとなおさらです。ここで重要となるのは予算の割合、すなわち、“そのイベントのために特化したインフラや施設投資”なのか、“公共の施設に対するインフラ整備に対する投資”なのか、ということです。
もしこれがイベントだけに特化した予算の振り分けになってしまうと、将来的な利用という面では難しくなってしまいます。重要となるキーワードとしては、サステナビリティ(持続可能性) とレガシー(遺産)です。現在、国際的にはこの2つの言葉がキーワードとなり、メガイベントのあるべき姿を、施設の再利用や複合的施設という観点も含めて見直されています。

T:日本ではこの新国立競技場問題に対して、誰が責任をとるのか(政府なのか発案者なのか、または組織委員会なのか)が焦点になっていますが、他の国ではどのようにプロジェクトが進められるのでしょうか?

G:オリンピックなどのメガイベントは、よく行政および民間、スポーツビジネス関係者の連携によって開催されます。全てのステークホルダーが意見を交えることは重要になる一方で、イベント全体をコントロールする管轄組織は意思決定を速め、迅速に計画を遂行していくために、十分に小さい必要があります。
建設などに対してはどうしても建設会社や行政とのやりとりの間でコストが上がったり期間が長引いたりすることがあるので、この点も独立したリーダーシップによってバランスをとり、予算や期限を守らせる必要があります。

T: これは日本に留まらないことかと思いますが、開催費・建設費の高騰などの問題に対し、IOCはオリンピックを継続可能なスポーツビジネスとしていくために、何か対応策を講じるべきでしょうか?

G:現在オリンピック招致を行う国が減っていることが、コストが高く将来的に国や街に利益の継続性が見えないことを物語っています。IOCやその他の国際的なスポーツ連盟などが要求・期待するものを緩和して、実行可能な招致活動をもとに、招致サイクルを回していくべきだと思います。
広い意味での国および街の経済的目的・アスリートやファンの目的・IOCや政府の目的を達成するために、とてもデリケートなバランスが必要になります。

T:多額の費用を要する開催費・建設費は、オリンピックの価値を下げてしまうのでしょうか?また、オリンピックはそれ以上の価値や遺産を見出すことができるのでしょうか?

G:W杯やオリンピックなどのメガイベントは、近年そのレガシーに焦点が当てられています。
直接的なリターンとしては、研究者たちは、大会中とその後で国内や海外からの観光客から収入が得られるとしています。
間接的なリターンとしては、社会の一体性を生むという面での利点や、世界に対して街のブランド力の向上なども挙げられますが、残念ながら研究の結果ではこれらの利益はとても短期的なものであり、その国のポリシーや大会後数ヶ月にどのようなことを行うかによって変わってくると言われています。
大抵のケースではこれらの直接、間接的リターンはオリンピックのコストを上回ることはないと言われています。

インタビュー・文:田中裕太 構成:SPOZIUM編集部